世間では、母親の愛は何よりも強い。またそうあるべきだという考え方が、今も根強いと感じます。そのベースにあるのは、言うまでもなく女性の母性に対する大いなる期待。女性が正常な成熟を遂げれば、彼女は子供を産み育てることを望み、その役割を積極的に果たしていくものだと、多くの人が思っているようです。子供がおらず、また積極的に欲しいとも思わない私などは、こうした考えに照らせば、女性として成熟していない、ということになるのでしょうか。少子高齢化への危機感から、このところ女性が産まないことを問題視する発言が増えているようで、なんとなく、生きづらさを感じているのは、私だけではないと思います。だからわざと意地悪な例を引くわけではないのですが、看護師として「病を得た母親たち」を見ていると、あまり母性を絶対視しない方が、と感じる場面が少なくありません。「子供のために早く良くならなくちゃ」と、前向きに病と闘う女性もたくさんいます。しかし、全ての母親がみんなそうかというと、それは残念ながらそうではない。痛みや苦痛にとりつかれた患者さんは、関心が自分の苦痛に集中し、視野が極端に狭くなるため、自分のことだけで手いっぱいになってしまうのです。